天才たけしの元気が出る日記

.□ 10/17 僕の初体験物語。 □.
大人になるとドキドキすることが減っていく。
初体験することが少ないからだろう。
4歳になったばかりの歌子は毎日がドキドキの連続で目がキラキラしている。
人生のスイも甘いもそこそこ体験してしまいこの先そうはないだろうと思っていた初体験が、まさか急に自身に降りかかるとは。

健康診断は何年振りだろう?
20年、、いやもっとか?
身長体重、血圧など。
採血がちょっとつらかったがまあ想定の範囲内だ。
クライマックスは胃の検査だ。
噂に聞くバリウム。
いい話は聞かない。
けどまあ長年の経験から、みんなの噂話でだいたいのキツさは予想できる。
たぶん嫌度(イヤド)はこのくらいで耐えられる度はこのくらいで。
しかしその予想を軽く上回るとは、まさにこれが想定の範囲外だ。

まず発泡剤という粒上のものを水無しで口に入れる。
その情報は無かった。
俗に言う、聞いてないよ!だ。
皆バリウムのことを語り合う際、なぜ発泡剤には言及しないのか、全くの謎だ。
バリウムはドロっとして気持ち悪いとか、案外飲みやすいよ、とかいろんな情報を出して来るくせに、その直前に飲まされる発泡剤に触れないなんて全く意味がわからない。
情報のないもの、想定外のことが起こると人はパニックに陥る。
僕がそれだ。
発泡、というネーミングが怖い。
「ハッポウザイです」と医師から渡された時、頭の中に???が溢れた。
「はっぽう?」「発砲?!」「破裂」「爆発!」
これが終わったらアウトレイジ最終章を見に行こうと画策していたのがまずかった。
ハッポウ=チャカでドン!のインプレッションが強い。
口の中で暴発したらどうしよう。
けど躊躇している暇はない。
俺はいつだって、読売ランドでバンジージャンプをしたときだって、神津島の岩の上から飛び降りたときだって、躊躇せず飛び込んだ。
弱いところは見せたくない、見栄っ張りなのだ。
今日だって発泡剤を口の中に一気に流し込んだ。
勢いが裏目に出た。
喉の奥のスイートスポットに一粒がホールインワンしたようだ。
バフっとむせて口から発泡剤が飛び出した。
まさに発砲した。
医師は「あっあわーー」と叫びながらも僕を気遣ってくれたが、機器や床に散らばったチャカのタマを拾い集めようとジタバタする僕の頭の中は完全にパニックだ。
「大丈夫ですよ、まだあるんで」と医師はなんと発泡剤をもう一袋飲まそうとする。
そりゃそうか、ほとんどぶちまけたんだから。
しかし一度やればもう初体験ではない。
全て想定内だ。
そっと口に入れ舌の上にとどめる。
できれば最初からこうしたかった。
しかしこの先だ。
バリウムはまだ未経験だ。
緊張が走る。
それは目の前の医師にも感じられる。
こいつ次は何をしでかすんだ、という目をしてる、気がする。
躊躇してはならない。
舌の上の発泡剤だって、早く飲み込まなければ、どうなるかは知らないがダメな気がする。
バリウムの紙コップを勢いよく傾けのどに流し込んだ。

もっとドロッとしたイメージだった。
皆の話を聞くとそうだった。
しかし思ったよりもサラッと口の中に飛び込んできた。
見誤った。
勢いがありすぎて口から溢れた。
手で覆ったが後の祭り。
口から手からTシャツにまでベッタリこぼれた。
もちろんまた床にも。
医師はまたも「あっあわーー」という声とともに助けようとしてくれたがもう遅かった。
手、顔、Tシャツ、そして床にべっとりバリウムが。
ウエットティッシュをもらい拭うがなかなかとれないもんだ。
バリウムがべったり付いたTシャツは脱ぐように言われた。
映ってしまうからだ。
病院服に着替え、また医師から発泡剤とバリウムを手渡される。
また最初からか。
3度目の発泡剤、2度目のバリウム。
たしかにどちらもぶちまけたが、胃のほうにも少なからず入っている気がする。
しかし医師は有無を言わさぬ強い態度で患者に差し出した。
患者はもはや抗うことは出来ず、手慣れた様子で二つの薬物を上手に胃へと流し込んだ。
もはや一滴も、一粒たりとも体外に漏らすこと無しに。
およそ1,8倍の発泡剤、1,5倍のバリウムを胃の中に感じた。
短時間での密度の濃い経験から、彼の神経は過去最高に研ぎすまされた。
まさに「自分の体のことは自分が一番よく分かってる」だ。
彼はゆっくりと、安定した足取りで診察台に上り、軽い深呼吸とともに大きなゲップをひとつした。

「あっ今ゲップした!!」

あーあ、また初めから?

.□ 9/27 サバイバー。 □.
荷物は極力減らしたい。
できれば手ぶらで目的地に向かいたい。
たまに電車でそういうサラリーマンを見るが、「何も道具はいらない、俺の体ひとつ、脳みそひとつあれば仕事ができるのだ」と言ってる気がしてかっこよい。
しかし、実際はそうはいかない。
もしお腹痛くなったらどうしよう?喘息が出たらどうしよう?汗かいたらタオルがあるし着替えもあったほうがいい、とあれもこれも詰め込んでリュックは膨れ上がってしまう。
音楽ツアーに行く時も、できればギターなんぞ持たずに行けたらどんなに楽だろう。
しかし、現地の人と仲良くなれずギターを借りれなかったらどうしよう?借りたところですごい引きにくかったらどうしよう?と悩み結局ギターを担いでいく。
そうすると必要な機材も付随しなかなかの大荷物になる。

ピアノ弾きのkyonさんが言っていた。
ギター弾きが羨ましい。
ピアノは運べない。
キーボードも難しい。
現場で借りることになるが、それを弾くというのは、歌うたいにとったら、「今日はこの喉で歌ってください」と言われるようなもんだ。
毎回初体験のコンディションの楽器とライブするのはいかに大変かがわかる一言だ。

それに比べればギターとそれに付随する荷物を持っていきさえすればいいのだから楽なんだろう。
けど荷物はどんどん増える。
着替え、髭剃り、髪に塗るドロっとしたやつ、歌詞のファイル。。。他にもいろいろ。
現地にある道具をうまく活用し乗り切るような、できればマスターキートンのような男になりたい。
そして俺の体ひとつ、頭脳ひとつあれば巨万の富を生み出すことができるのだ、といつか言いたい。


 

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