天才たけしの元気が出る日記

.□ 4/27 平成の終わりと少年と俺。 □.
釣竿を2、3本持ってチャリンコに乗れるように、なんかいいものないかなとホームセンターをうろうろして、塩ビのパイプを見つけた。
塩化ビニール製の管だ。
竿がちょうど差し込めるくらいの細めのやつを2本買って帰った。
サドルと荷台の隙間にスーーっと一本入るスペースがあった。
好位置だ。
縦並びにもう一本いけそうだ。
しかしフレームが邪魔して入りそうで入らない。
トンカチで軽くコンコン叩きながら押し込んでいくと塩ビパイプの特性もあってかグイグイっと入っていく。
二本並びで見事にギューーっと固定された。
シンデレラフィットだ。
しかし走行中に外れても危険なので結束バンド数本でさらに固定した。
うんともすんとも動かない。
大成功だ。
結束バンドも只者じゃない。
一度結束したら終わりのやつじゃなく、プチっと押すと外れて何度でも使える優れものだ。
100円ショップはやはり侮れない。
完成。
見た目は昔の暴走族の縦並びマフラーにちょっと似てる。
あんなには長くないけど。
竿も二本差し込めて超安定。
我ながら見事なDIYだ。
ご機嫌で近所の川を走り回る日々だ。
それに対し釣果はひどい。
まったく釣れない日々だ。
それは腕がないから仕方ないとして、塩ビ2気筒に関してのちょっとした事件が起こった。
母さん、事件です!

昨日、GW前最後の釣行に出かけた。
GWになるとわさわさと釣り人が集まり、ゴミを散らかし、ガキもはしゃぎ回り、ボッチャンボッチャン水面を叩き、釣りどころではなくなる。
その前のラストチャンスだ。
しかし突然冷え込んだ。
チャリンコを川辺に停めて、竿を持って散策した。
薄着の浅はかさに自己嫌悪になりつつ、寒さに震えながらも、やはり今日も釣れない。
2〜300メートル進んで折り返してくる。
向こうの方でガキどもが川に向かって石を投げまくっている。
休みは明日からなのに早くも出たか。
もうはしゃぎまくっているようだ。
釣りながらだんだん近づいていった。
停めたチャリンコは木陰に隠れまだ視界に入らない。
さっきのガキがそのあたりでウロウロしてる。
チャリに鍵はかけていない。
パクられたら面倒くさいなあ、まあこの距離なら大声出せば届くだろうし、今時チャリ盗む奴もいないだろう。
距離50m弱。
チラチラ見てると一人の奴の手に何か棒状のものが見えた、気がした。
ん?
鉄パイプ?
いやそんな長くない。
塩ビのパイプ!?
まさかなあ、と思って近づいていくと奴らもこちらの方へ歩いてくる。
手には何も持ってない。
けどすれ違う頃よく見るとジャージのズボンの中に足に沿う形でパイプみたいな膨らみがある。
まさか!!と、チャリを見るとパイプがない!
「おい!!」という声が気づいたら出ていた。
相手は3人、どうやら中学生くらい。
しかし武器を持っている。
鉄パイプではないが、塩ビでもそこそこ威力はある。
殺られるかもしれない。
しかし所詮田舎の中坊だ。
「おい!!」という声にビクッとして逃げもせず、こっちを見て固まっている。
「お前盗っただろ」
「え?」
「ズボン膨らんでんじゃねえか、出してみろ」
まるで万引きGメン、いやカツアゲするヤンキーの口調だ。
自分が中学生の頃、カツアゲをされた経験があり、それを思い出してしまう。
あれは嫌なもんだ。
恐怖と屈辱。
やるほうはさぞや痛快なのかと思っていたが、やるほうはやるほうで気分が悪いことがわかった。
いや違う!俺はカツアゲなんかしようとしていない。
彼はかなりビビって顔を硬直させつつ、ズボンの中から塩ビのパイプを2本抜き出した。
現行犯だ。
もう言い訳はできない。
「なんで盗った?」
こっちはもう冷静に叱ってやろうという優しさを言葉に醸し出してやった。
ところが、「落ちてたんです」
と、驚きの答えが返ってきた。
怒りが芽生えたが出来るだけ冷静に
「ちょっとこっち来いよ」
近づいてくる。
ここで興奮させ、殴りかかられたら厄介だ。
中坊とはいえ、身長は変わらない。
最近は栄養がいいのかガキんちょもどんどんでかくなる。
俺も180あるかないかだが相手もそれに匹敵する身長だ。
仲間の二人はちょっと離れたところで見守っている。
加勢する気はないようだ。
「あーああいつバレちゃったあ、大丈夫かなあ」という顔だ。
ここは冷静に、無言でジーーッと目を見つめる。
ちょっとやばそうなおじさんぶってみた。
「返せ」
「はい、、、」
無事に凶器は取り戻せた。
「どこに落ちてたって?」
「こっちの木の下の方に、、」
そんなわけあるかーい、と突っ込みたくなるが我慢。
ジーーッと目を見続ける。
無言が続く。
「なんで持って行った?」
「何かに使えるかと思って、、、」
また突っ込みたくなるし笑いそうになるが我慢。
わかるぞ少年。
明日からGWで、仲間と石投げて楽しすぎてはしゃいではしゃいで勢いが出ちゃったんだな。
知ってる、俺もそうだった。
俺もバカだった。
思い出すのも恥ずかしいくらい。
そうなんだ、中学生くらいの男子はみんなバカなんだ。
わかるけど、ダメだ。
大人として戒めないと。
やばいおじさんとして脅かさないと。
はしゃぎすぎると怖い目にあうんだってことを教えないと。
けど、落ちていたという発言が嘘とは限らない。
これで「嘘をつけ、お前が盗ったんだろう!」では、
大人はやっぱり信用できない。
大人になんかなりたくない。
大人になるくらいなら死んでやる、なんてことになったら大変だ。
将来有望な男子の未来を潰すことになってしまう。
どうしたもんかと考えあぐねながら目を見つめ無言が続く。
本当は僕がやりました!刑事さんごめんなさい!なんて自白してくれれば楽なんだけど、それには不眠不休で5時間は要するし、顔に浴びせる強いライトや自白後のカツ丼も必要になってくる。
こちらが音を上げた。
「もういい、行けよ」
彼は仲間たちの元に走って行った。
これで良かったのかな。
きっと彼らは後で、「おいやばかったなあ」「ビビったろ」「いや、あんなのちょろいよ」「明日からGWだな」「楽しみだな」「もう塩ビ落ちてないかな」なんて反省もせずはしゃいで浮かれ直すんだろうか。
教育は難しい。
信じてやらなければならない。
怒るんじゃない、叱るんだ。
俺もおじさんになったし、人の親にもなったしなあ。
なんてことをぐるぐる考えながら、パイプをもとに差し込もうとしたが、1本はスーーっと入るけど2本目が入らない。
そうだトンカチが無いと入らないんだ、めんどくせえ、と今更怒りがピークに達してきたのだった。

.□ 3/30 終電。 □.
君はどこの街まで行くんだろう。
僕よりも田舎に住んでいるのかな。
いびきをかいて、窓に頭をぶつけた僕をどう思ったろう。
さあ、僕の街だよ。
一緒に降りないのかい。
じゃあまた。


 

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